Initial Investment / 介護・デイサービス

介護・デイサービスの開業資金はいくら?小規模デイ・有料老人ホーム・訪問介護の初期投資を整理

介護施設の開業資金は小規模デイサービスで800万〜2,000万円、訪問介護で500万〜1,500万円、有料老人ホームで1億〜5億円が標準レンジです。介護報酬制度・人員基準・3年ごとの介護報酬改定を踏まえた業態別の内訳と運転資金を整理しました。

業界 / 介護・デイサービス観点 / 開業に必要な初期費用と内訳を整理

介護は、収益の多くを介護保険(公定価格)が占める「制度ビジネス」でありながら、高齢化で需要の拡大が続く業態です。開業資金は、自宅で始める訪問介護の500万円台から、有料老人ホームの数億円まで、業態で10倍以上ひらきます。本記事では、業態別の開業資金と内訳、開業に必要な条件(法人格・事業者指定・人員基準)、介護報酬の入金の流れをふまえた運転資金、調達方法を整理します。

介護事業を始めるための前提

金額の話に入る前に、介護事業には他業種にない開業の前提があります。ここを外すと、いくら資金を用意しても事業を始められません。

まず、介護保険サービスの事業者指定を受けるには、原則として法人であることが必要です(介護保険法)。株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人などの法人格が要り、個人事業のままでは指定を受けられません。開業前に法人を設立しておきます。

次に、都道府県または市町村から介護保険事業者の指定を受けます。指定には、サービスごとに定められた人員基準・設備基準・運営基準を満たす必要があります。たとえば訪問介護なら、常勤換算で2.5人以上の訪問介護員に加え、サービス提供責任者と管理者を置くことが求められます。デイサービスなら、生活相談員・看護職員・介護職員を提供時間帯に応じて配置し、機能訓練指導員を1名以上置くことが要件です。この人員を、売上が立つ前から確保して人件費を払う点が、介護の開業資金の特徴になります。

指定は申請から1〜2ヶ月ほどかかり、毎月の申請締切も決まっています。物件・人員・書類がそろってから指定を受け、その後にサービス開始という順番になるため、逆算してスケジュールを組みます。

介護施設の開業資金は業態で5つに分かれる

公開されている開業モデルや業界の相場を整理すると、介護の開業資金は5つの業態で大きく分かれます。

業態初期投資レンジ自己資金目安立ち上がりの目安
訪問介護事業所500万〜1,500万円200万〜500万円6〜12ヶ月
小規模デイサービス(民家活用)800万〜2,000万円300万〜800万円12〜18ヶ月
通所介護事業所(中規模)2,000万〜5,000万円800万〜1,500万円18〜24ヶ月
グループホーム(認知症対応型)5,000万〜1.5億円1,500万〜3,000万円24〜36ヶ月
有料老人ホーム(大規模)1億〜5億円5,000万〜1.5億円36〜60ヶ月

介護の主要原価は、物件・設備と人件費に集中します。介護報酬という公定価格で売上の単価が決まるため、人員基準を満たす人件費をどれだけ効率よく売上に変えられるか(稼働率)が収益を左右します。他業種の開業資金水準と比べたい場合は 業界別 開業資金ランキング を参照してください。上表の立ち上がりの目安は、立地・稼働率・人員体制で大きく変わるため、事業計画では月次の収支で個別に試算してください。

業態別の開業資金レンジ(対数目盛) 訪問介護と有料老人ホームで資金は100倍ちがう 500万2,000万7,500万2億5億 訪問介護500万〜1,500万 小規模デイ800万〜2,000万 通所中規模2,000万〜5,000万 グループホーム5,000万〜1.5億 有料老人ホーム1億〜5億
横軸は対数目盛。自宅で始める訪問介護と大型の有料老人ホームでは資金規模がまったく違う。

訪問介護事業所:500万〜1,500万円の最小参入

訪問介護事業所は、自宅兼事務所で開業できる最小規模の業態です。介護福祉士や所定の研修を修了した訪問介護員を配置し、利用者の自宅を訪問してサービスを提供します。

内訳項目金額目安備考
事務所設備(自宅兼用)50万〜150万円PC・電話・記録用のシステム・鍵付き書庫
訪問用の車両(2〜3台)200万〜500万円軽自動車中心、リース活用可
介護用品・消耗品50万〜150万円手袋・エプロン・入浴介助用品
事業者指定の申請・法人設立30万〜80万円法人設立費用・申請の代行料など
初期広告・販促30万〜100万円名刺・パンフレット・地域営業
初期投資の目安(運転資金を除く)500万〜1,500万円規模・人員配置で変動

訪問介護は、店舗の物件費がかからず固定費が軽いため、少人数でも運営しやすい業態です。ただし人員基準を満たす訪問介護員を売上が立つ前から確保するため、人件費の立て替えが資金計画の中心になります。

小規模デイサービス(民家活用型):800万〜2,000万円

民家を改修して10名定員で運営する小規模デイサービスは、茶話本舗・ぬくもりの里などのFCが代表です。詳しくは 茶話本舗(小規模デイサービスFC)の加盟は儲かるか を参照してください。

内訳項目金額目安備考
民家の改修費300万〜800万円バリアフリー化・浴室・トイレ
送迎用の車両100万〜300万円リフト付き軽自動車
設備・備品100万〜300万円リクライニングチェア・調理設備
事業者指定の申請・法人設立30万〜80万円法人設立費用・申請の代行料など
初期広告・販促50万〜150万円パンフレット・ケアマネジャーへの営業
初期投資の目安(運転資金を除く)800万〜2,000万円民家規模・改修水準で変動

小規模デイサービスは、民家活用で物件取得費を抑えられる代わりに、定員で売上規模の上限が決まります。民家型では10名前後の定員で運営するモデルが多く、制度上の地域密着型通所介護は利用定員18人以下です。月商300万〜500万円が一つの目安で、規模を伸ばすには複数施設の展開が必要です。FCに加盟する場合は加盟金が別途かかり、金額は本部で異なるため開示書面で確認します。

通所介護事業所(中規模):2,000万〜5,000万円

定員20〜40名の中規模通所介護は、商業ビルの1〜2階を活用して運営します。送迎範囲・機能訓練・食事サービスなどで差別化します。

内訳項目金額目安備考
物件取得(保証金・礼金)200万〜800万円商業ビル1〜2階
内装・什器800万〜2,000万円機能訓練エリア・浴室・調理設備
送迎用の車両300万〜800万円リフト付きハイエース・マイクロバス
設備・備品200万〜500万円機能訓練機器・リクライニング
事業者指定の申請50万〜100万円申請の代行料など
初期投資の目安(運転資金を除く)2,000万〜5,000万円規模・人員配置で変動

通所介護は定員20〜40名で運営し、売上は定員・稼働率・要介護度・加算の取得状況で変わります。機能訓練特化型や認知症対応型など差別化の軸を選べる業態です。

グループホーム・有料老人ホーム:5,000万円〜数億円の大型投資

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、定員9〜18名の認知症高齢者向けの共同生活施設で、物件取得・建設と内装で5,000万〜1.5億円規模になります。夜勤を含む人員体制が要件で、人件費が固定費の中心です。

有料老人ホームは、土地取得・建物建設で1億〜5億円規模の本格投資です。介護付き有料老人ホームは特定施設入居者生活介護の指定が必要で、人員基準・設備基準が厳格に定められています。新規個人の参入はかなり限定的で、まず訪問介護や通所介護で運営経験を積んでから検討するのが現実的です。

どの業態から始めるか

初めて介護事業を立ち上げるなら、資金と運営の両面から、まず訪問介護や小規模デイサービスといった軽い業態から始めるのが現実的です。訪問介護は物件費がかからず500万円台から参入でき、人員基準も比較的満たしやすい業態です。

小規模デイサービスは、民家を活用して物件費を抑えつつ、通所ならではの稼働率で売上を積めます。ここで指定の実務や国保連への請求、ケアマネジャーとの関係づくりを経験しておくと、通所介護の中規模化やグループホームへの展開に進むときの土台になります。

一方、有料老人ホームやグループホームは、初期投資が数千万円〜数億円と大きく、人員体制も重いため、運営経験のない状態でいきなり挑むのは資金リスクが高くなります。段階的に業態を広げる設計が、資金の面でも安全です。

介護報酬の入金は「約2ヶ月遅れ」で来る

介護の資金計画で最も重要なのが、売上の入り方です。介護報酬のうち保険給付分(利用者負担の1〜3割を除いた7〜9割)は、利用者本人ではなく、国民健康保険団体連合会(国保連)から支払われます。

流れはこうです。サービスを提供した月の翌月10日までに、国保連へ介護報酬を請求します。その入金は、さらにその翌月末になります。つまり、サービスを提供してから実際に現金が入るまで、およそ2ヶ月かかります。

この2ヶ月のあいだも、人件費や家賃、車両費は毎月出ていきます。開業直後は利用者が少なく売上も小さいうえに、その小さな売上すら2ヶ月遅れで入るため、開業から半年〜1年ほどは持ち出しが続きます。ここを読み違えると、利益は出る計画なのに手元資金がショートします。

介護報酬の請求から入金までの流れ 売上が入るのはサービス提供の約2ヶ月後 サービス提供当月 国保連へ請求翌月10日まで 入金翌々月末 この約2ヶ月は人件費・家賃を立て替える
開業直後はこの入金遅れが重なるため、運転資金を12ヶ月分ほど厚めに持つのが安全圏。

だからこそ、運転資金は業態に応じて厚めに見積もります。

  • 訪問介護事業所: 月固定費20万〜50万円 × 6〜12ヶ月 = 120万〜600万円
  • 小規模デイサービス: 月固定費80万〜150万円 × 12ヶ月 = 960万〜1,800万円
  • 通所介護事業所(中規模): 月固定費200万〜400万円 × 12ヶ月 = 2,400万〜4,800万円
  • グループホーム: 月固定費200万〜400万円 × 12〜18ヶ月 = 2,400万〜7,200万円

全業種の開業費用と比べると、介護はどのくらいか

業態別のレンジだけでは、他業種と比べて重いのか軽いのかが分かりません。公的調査と突き合わせます。

日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」によると、開業費用は平均975万円、中央値600万円です。この調査の対象は、同公庫の国民生活事業が2024年4月から9月にかけて融資した企業のうち、融資時点で開業後1年以内の企業です(不動産賃貸業を除く8,517社に調査票を送付し、2,165社が回答)。公庫から融資を受けた企業を母集団とする、全業種を対象とした数値です。

そのうえで比べると、訪問介護(500万〜1,500万円)は全業種の中央値600万円と同水準か、やや重い程度です。一方、通所介護以上の施設型になると、物件・設備・人員が同時に必要になり、大型の有料老人ホームでは平均975万円の数十倍から数百倍の規模になります。自分がどの業態に立つかで、自己資金と融資の設計はまったく変わります。

収益は公定価格と加算で決まる

介護は、サービスの単価を事業者が自由に決められません。介護報酬という国が定めた公定価格で単価が決まり、その報酬は3年ごとに改定されます。カフェや小売のように値上げで利益を出すことができないため、収益を伸ばす手立ては、稼働率を上げること、人員を定着させること、そして各種の加算を取ることに絞られます。

加算とは、一定の体制や取り組みを満たすと報酬に上乗せされる仕組みで、処遇改善加算、認知症対応や個別機能訓練の加算などがあります。本部の年商モデルはこれらの加算を取得した水準で示されることが多く、開業1年目の加算を取る前の実態は、モデルより低い売上から始まるのが普通です。

もう一つ意識しておきたいのが、介護報酬の改定です。介護報酬はおおむね3年ごとに改定され、直近は2024年度に改定されました。その後も加算などの見直しが続いており、改定でサービス種別ごとに報酬の単価が動くため、開業時の収支計画が改定後にずれることがあります。近年は、業務継続計画(BCP)の未策定に対する減算なども設けられており、制度の変更に運営体制を合わせ続ける負担も見込んでおきます。

利用者はケアマネジャー経由で来る

介護の集客は、一般の消費者向けビジネスと大きく違います。多くの利用者は、広告を見て自分で事業所を選ぶのではなく、担当のケアマネジャーが作るケアプランを通じてサービスを利用します。事業所を紹介してくれるのはケアマネジャーです。

そのため、開業後の営業先は利用者本人ではなく、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャーになります。自分の事業所がどんなサービスを、どんな体制で提供できるのかを地域のケアマネジャーに知ってもらい、信頼を積み上げることが、利用者数に直結します。開業前の事業計画でも、商圏内にケアマネジャーが何人いて、どう関係をつくるかを織り込んでおくと、立ち上がりが早くなります。広告費で新規客を集めるカフェや小売とは、集客の構造がまったく違う点を理解しておく必要があります。

人材の確保と定着が経営を左右する

介護は人員基準で必要な職員数が決まっているため、人を採用できなければサービスを提供できず、売上も立ちません。介護人材の不足は続いており、採用は年々難しくなっています。開業計画では、必要な有資格者を開業までに確保できる見通しを、資金と同じ重さで検討します。

採用したあとの定着も重要です。職員が入れ替わると採用と教育のコストがかかるうえ、人員基準を割ると事業の継続そのものが危うくなります。国は、職員の待遇改善のために処遇改善加算などの仕組みを設けています。これらの加算を取って給与や手当に反映し、働き続けられる職場をつくることが、結果的に収益の安定につながります。人件費は売上より先に発生し、その売上は約2ヶ月遅れで入ることを、資金計画で重ねて見込んでおきます。

開業資金を融資・補助金で調達する

制度の名称や条件は改定されます。ここでは公式資料で確認できる内容を整理しますが、申し込みの前に最新の内容をご確認ください。

福祉医療機構(WAM)の融資

福祉医療機構(WAM)は、介護・福祉・医療の事業に特化した公的な融資機関です。長期・低利の融資が受けられ、返済期間を長く取れるため、施設整備をともなう通所介護や有料老人ホームと相性がよい制度です。一方、訪問介護や小規模の案件では、次の公庫や民間金融機関、自治体の制度融資とも比較して選びます。

日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」

公庫の創業向け融資で、WAMと併用できます。公式の制度案内では、利用できるのは新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方で、融資限度額は7,200万円です。事業計画書には、商圏内の高齢者人口・要介護認定者数・既存事業所の稼働状況・介護報酬収入の試算・損益分岐となる利用者数を、根拠とともに書き込みます。

自治体の補助・小規模事業者持続化補助金

地域包括ケアの推進にともない、自治体によっては小規模デイサービスやグループホームの整備に補助を設けている場合があります。あわせて、販路開拓を支援する小規模事業者持続化補助金(通常枠は補助上限50万円、創業型は補助上限200万円。いずれも特例活用で最大250万円・補助率2/3)を、パンフレット制作などの販促に充てられます。補助金は採択制で、原則として後払いになる点に注意します。制度の有無と要件は自治体・年度で異なるため、開業エリアの自治体窓口で確認します。

開業前に確認すべきこと

介護事業の開業前に、以下のチェックリストで計画を確認します。

  • 法人の設立と、介護保険事業者の指定申請(都道府県・市町村)の取得スケジュール
  • サービスごとの人員基準(管理者・サービス提供責任者・介護職員・看護職員・機能訓練指導員など)の配置計画
  • 介護報酬の入金が約2ヶ月遅れることをふまえた、運転資金の厚み
  • 開業エリアの高齢者人口・要介護認定者数・既存事業所の稼働状況
  • ケアマネジャー(地域包括支援センター・居宅介護支援事業所)への営業計画
  • 介護報酬の改定(おおむね3年ごと・直近2024年度)と、加算取得・BCPなどの運営体制
  • 介護人材の採用計画(処遇改善加算を活用した待遇の設計を含む)

介護は、公定価格の制度ビジネスでありながら、高齢化で需要の拡大が続く業態です。LMPはフランチャイズ加盟店開発を支援するBPOを手がけており、その加盟店開発支援の観点でいえば、介護事業の収益が安定するかどうかは、業態選択、ケアマネジャーや地域包括支援センターとの関係づくり、加算を取れる体制、そして人員の定着に強く左右されます。本部の年商モデルをそのまま当てにせず、自分の商圏で要介護認定者数の密度や既存事業所の稼働状況を数字で確かめておくことをおすすめします。

本記事が参照した一次情報

業態別の初期投資・月商は業界相場に基づく推定です。公庫の開業費用・資金調達額は全業種を対象とした調査結果であり、介護業に限定した数値ではありません。人員基準・指定の要件、補助金の上限額・要件、介護報酬の内容は改定されるため、開業・申請の前に最新の内容をご確認ください。

本業界全体の市場規模・主要プレイヤー・出典は、介護・デイサービスのビジネスモデル全体像 にまとめています。

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